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絶体絶命!日本国憲法

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2004年 09月 14日

池田小事件と死刑執行

憲法第三六条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」としているが,死刑は「残虐な刑罰」には該当しないと解するのが確立したといっていい解釈である。

ところで,死刑が確定した受刑者は複数いるが,死刑執行段階においても差別がなされてはならない。

第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

池田小事件における被害者遺族の心中は察するにあまりある。その残忍さを考えるとき,罪を犯したものに死刑が科され,これが執行されることは当然の報いである。

しかし,死刑は国家が合法的に行う殺人行為であるから,その執行に何らかの恣意・不合理な差別がはたらいてはならないであろう。

今回の死刑執行は,異例の早さである。異例を正当化する理由は,なによりも行った罪の重大性であろう。しかし,他の(従来の例も含む)受刑者の罪もやはりこの上なく重いわけであり,その時間的差をいかに考えたのか,法務大臣は遺族は勿論国民に説明すべきであろう。

また,何よりも遺族の心情が死刑執行手続きにおいてどの様に反映されたのか,中には真実を語らぬ不遜な犯人に真実を語らせたい,あるいは,早く死なせるべきではない,苦しみを味合わせたいと考えた遺族はいなかったのか?勿論いち早く死で償ってもらうという心情が圧倒的と思われるが,遺族の心情の刑の執行段階での反映がきちんとなされているか(説明責任も含めて),政府の対応を検証する必要はあろう。

また,凶悪な犯罪者に対して,我々市民は法を遵守し,正義であり続けなければならない。凶悪な犯罪者であるからさっさと殺してしまえばいいというのでは我々も凶悪な犯罪者に堕する。私は死刑廃止論者ではない。しかし,死刑廃止論者の呈する様々な傾聴に値する意見も踏まえながら,死刑制度や刑の厳罰化・犯罪被害者の救済・被疑者,被告人,受刑者の人権・犯罪予防などを考えていかなければならない。

なによりも亡くなった児童の冥福を改めて祈る。

by notarmirude | 2004-09-14 17:54 | ひとりごと


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